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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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エピローグ

 
―エピローグ―

 
 

――僕は、ふうと息を吐いて空を見上げてみる。
どこまでも青く青く、雲はない。

うーん……あれから千年ちょっと経ちますけど……。
偶然って、本当にすごいですねえ……。

次の街での名物料理の事を話す、前を歩く二人の姿を見やり
僕は思わずしみじみと考えてしまう。

何せ、あのお二人……リナ= “インバース” さんと、
ガウリイ= “ガブリエフ” さんっていうんですしねえ。

彼らの遠い子孫なんでしょうね、きっと。
顔があんなに似ていますから。
人間の……何でしたっけ、先祖返りでしたっけ?
多分、そういう感じなんでしょうかね。

まあ今までお二人の苗字が違っていたということは、
きっとそういうことだったんでしょうけれど。

彼女たちに会った時は、本当に驚きましたよ。
もちろん悟られないようにしましたが。



――そう、まるで一瞬の出来事。

彼が死んだ時。
その身から不完全に融合したスィーフィードさんの意思と、
魔王様の思念が、魔力となり弾け飛んで僕に直撃した。

その強い意志によって、垣間見た彼の過去。
最も正が負に冒された時の記憶。

気づけば彼の姿をとってゼラス様の元へ戻っていて、
かつ魔王様の元にまで行きましたし。
何の衝動だったか、本当に分かりかねる所はありますね。

まあ……もしくは人間的に言えば “知りたかった” ……と、
いうのかもしれません。
魔族の僕には本来まったく必要ない、むしろいらないものですが。

そこまでして赤の他人を想ってしまう “感情” 。
そこまでして何かを守ろうとしてしまう “感情” 。
そこまでして奮い立ち戦ってしまう “感情” 。

この姿をとればそれが分かるのかもしれないと……
無意識に考えた?

たとえ、その時がそうなのだとしても。
僕は今だって確信を持って言うことなど出来はしません。
けれど、何だかんだと彼女たちに関わってきた今だからこそ、
言えることなのかもしれませんけどね。

頼みもしないでも、彼女達はその儚い “感情” を、
とても強く僕に見せつけてくれましたから。

それに、ただの人間がここまで深く僕たち魔族に関わってくるとは、
……正直思っていませんでしたからね。

何せそのおかげで、リナさんは 『あの御方』 のことまで。
全てではないとはいえ……理解しちゃいましたし……。
しかも……畏れ多い事に降臨まで……。
確かに、クレアバイブルの所まで行くようにしましたが……
異世界の魔王様方のごたごたさえ……ぶつぶつ。





「おーい、どうしたんだ、ゼロス? リナが遅いから置いてくって
 言ってるぞ」
「へ? ああ……すみません」

にっこりと笑ってガウリイさんに答える。
きょとんとした顔で首を傾げるガウリイさんは、
リナさんとの食事時以外は彼にあまり似てませんね。
何故だか、リナさんの方は普段もものすごく似てますけど……。


どんっ!!


街道を向こうから走ってきた子供が、転びそうになったのか
ふいによろけて僕にぶつかる。
ぱっと顔を上げた子供は、酷く慌てた顔をした。

「あ……っ、ごめんなさい、神官様っ!」
「僕は大丈夫ですよ。気をつけて下さいね」
「はい!」

その子供は大きく一つ頷くと、また僕たちが歩いてきた
道の方へ走っていく。

……さて、早く行かないと。
リナさんのご機嫌が急降下して、斜めになりかねません。
追いついたガウリイさんともども、ドラグ・スレイブなんてことは
それはさすがに、ご遠慮願いましょう。










「……それにしても驚いたな……どうして、あんな格好を
 してるんだろうね? 思わず転びそうになってしまったよ」

三人が道の先に見えなくなったあと。
ゼロスにぶつかった子供は振り向いて、首を傾げる。
見かけの年齢に似つかわしくない表情と動作。
柔らかそうな黒髪が揺れて、大きな碧眼が煌いた。

「だけど、ちょっと嬉しいかな」

くすくすと子供が笑う。

「あっ! こんなトコにいたあっ!?」
「お姉ちゃん」
「お姉ちゃんじゃないでしょ!」

ぜえぜえと息を切らしながら走ってくる黒髪の女性に、
子供がにっこりと可愛らしく微笑む。
だが、女性はじっとりと子供を軽く睨んだ。

「ったく! あんたがいきなりゼフィーリアに行ってみたいって
 言うからこうやってついてきてるのにっ!!」
「ごめんなさい」
「あーもう。てこてこ先行かないでよ」
「お姉ちゃん方向音痴だもんね?」
「だぁぁあああっ!! もーこの子はーっ!!」

女性が頭をかきむしった。
子供はまたくすくすと楽しそうに笑って、女性に聞こえないほど
小さい声で呟いた。

「どんな人なのかな。今度の私の対になった人は」





END.

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