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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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―眷属達―

 
 

ゼフィーリアを出て、しばらく街道を歩いていく。
リヴィはきょろりと辺りを見回し、人通りを確かめる。
誰も通らない時を見計らい、近くの森の中へと道をそらす。
街道からは目が届かない場所まで歩いてくると、
ようやくリヴィは立ち止まった。

「さて……」

リヴィは虚空に手を伸ばす。
手の中に、鮮やかな紅の宝玉のついた杖が瞬時に現れた。
しかしその素材は木ではなく、オリハルコン。

前世で使っていた木製の杖を、今はあの青年が使っている。
彼がどうしてあんな姿をとっているのかは、分からない。
だが、彼がそれを選んだのならリヴィに何かを言う権利はない。

「リナ=インバースさんはどこにいるかな?」

トン、と軽く地に杖先を打ちつける。
すると宝玉から光りが灯り一つの筋を作った。
示された先は――。

「……セイルーン、か」

リヴィは頷いてくるりと杖を軽く回す。
そしてもう一度トンと地を打った。

「移転」

瞬間。
宝玉からその色と同じ鮮紅の光が溢れて、リヴィを包む。

「とりあえず、近くの森にでも降りようか」

風が吹いた刹那。
リヴィの姿は森の中から消えていた。





セイルーンへと続く街道。
その森の中に、ふっと大きな鮮紅の光が虚空に灯る。
そしてその中から出てきたのはリヴィ。
音を立てる事もなく地に降り立つと、光は唐突に消えた。

歩き出そうとしたリヴィはふと立ち止まる。
獣の唸る、吠える耳障りな声が聞こえたのだ。
そしてそれに混じって女性と少年の声が。

きびすを返して、リヴィは方向を変えた。

しばらく行くとはっきり声が聞こえてくる。
どうやらレッサーデーモンの群れに襲われているらしい。
木々の間から目線を送ると、金髪の女性が水色の髪の少年を
背に庇いつつ、メイス形状のモーニングスターをぶん回していた。
しかし相手は下級とはいえデーモン。
簡単には倒れず、何度も立ち上がってくる。

それにキレたのか、女性は口を開いて大きく息を吸う。
嫌な予感を覚えたリヴィはトン、と地を打った。


ちゅどんッ!!


いきなり倒された全てのデーモンに、女性と少年は唖然とする。
リヴィは手の中から杖を消す。
そしてわざと音を立てて、二人の前に姿を現した。

「大丈夫ですか?」
「……え?」
「たちの悪い野良デーモンに襲われたみたいですね」

リヴィは首を傾けて言う。
それに、はっと我に返る女性と少年。

「あ、ありがとう」
「いいえ……さすがに森の中でレーザーブレスは、と……
 思いましたので」

苦笑するリヴィに女性は顔を赤く染める。
よくよく近づいてみれば、女性と少年が人間ではなく、人型に
変身している竜だと分かる。
しかも女性の方は伝言に関係ありそうな気配をしていて、
少年はとても希少な気配だった。

気配と言った所で、記憶を持っている今のリヴィには
二人がどの眷属かもすぐに分かるのだが。

「そ、そうですね。私としたことがつい……」

焦る女性の後ろから少年が出てくる。

「悪いな……助かった」
「たまたま通りかかっただけですけどね」
「おい、フィリア。何か礼をした方がいいだろ」

少年の見た目はリヴィと同じくらいの年齢だったが、
やはり同じようにその見た目に似合わぬ言葉遣いで話す。
リヴィの話し方に驚かないのはそのせいだろう。
そうして少年が女性を見上げると女性は大きく頷いた。

「もちろんよ、ヴァル。私たちはこれからセイルーンに行くのですが、
 そこでご飯をおごるというのはどうでしょう?」

きっと二人は昼食がまだなのだろう。
少し前にリアランサーで食べてきたリヴィは、まだお腹は
それほど空いていないものの断るのも失礼だと思い、同意する。
そしてリヴィは、フィリアとヴァルと名乗った二人とともに、
セイルーン・シティへと向かうことになった。





セイルーンへと入り食堂を目指して歩いていくと、
ざわざわと広場がにぎわっている。
何か見世物でも行われているのかとリヴィは思ったが、
周りの野次馬達の煽る声からしてどうやら喧嘩のようだ。

「インバース・ロイヤル・クラーッシュ!!」


ドゴゴリュッ!!


痛そうな音がした。





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