忍者ブログ

黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

11




「……大丈夫ですか?」
「え――」
「単なる人違い、なんですよね?」

驚きと放心に揺れる瞳に、思わずあたしは小さく苦笑する。
少しだけ首を傾げてみせると、金髪のバーテンダー服の男の人は
戸惑いがちにひとつ頷いた。
すると彼の後ろから、もう一人男の人が出てきた。

きっとさっき彼にストップをかけた、ドレッドヘアーでスーツの男の人。
その人もあたしを見て、何だかすっごく驚いた顔をした後で、
焦ったように問いかけてくる。

「お、おい、お嬢ちゃん! 怪我はなかったか!?」
「はい、私は特に。えっと……私と間違えた人はいいんですか?」
「えっ? あ、ああ、あの通りだよ」

男の人は少し怪訝そうな顔をしてから、後ろを指差す。
ひょいっと彼の横から後ろの方を見てみる。
そこには、気絶したように道に倒れた人がいた。

っていうか今気づいたけど、周りに人がいない……。
こんな閑散としたサンシャイン通りを見たの、初めてだよ。

まあ、あんな風に気絶した人を見るのも初めてといえば
初めてだけどね……。

とりあえず、今日はもう帰った方がいいかな?
気になることも出来ちゃったし……。

「それなら、私はこれで――」
「っ待て!!」

二人に浅く頭を下げて、あたしがその場を抜け出そうとすると、
金髪の人が我に返ったようにあたしの手を掴む。
……うん。
見るからに金髪の人は力を入れて握ってるっぽいんだけど――
やっぱりあんまり痛くないな。

あたし、痛みに対して堪え性があるとかそんなんじゃないのに。

「えっと……何でしょうか……?」
「あー、その……っ迷惑、かけたから……昼飯、驕らせてくれよ。
 別にいいっスよね? トムさん」
「あ――ああ。それはもちろんいいけどよ……」

お前もいいか? と、おそるおそる問いかけてくるのに対して、
強く断れるわけがないでしょうに。




恐怖なんてもの、抱く必要はない

拍手[0回]

PR