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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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「っ……!?」

え、ちょっと待って。

今何が起きてるのか分かんないんだけど。
掌に押さえつけられた視界は真っ暗。
それでいてで、音も不協和音としか受け取れない。

聞こえるのは耳のすぐ横で聞こえるミシミシと何かが軋む音と、
頭に与えられてくる圧迫感。
酷い眩暈が起きたように、ぐらりぐらりと脳が揺れる。

ちょ……気持ち悪くなってきた……。

「散々逃げやがって……ようやく追いつめたぜ」

誰を? あたしを? 何で?
っていうか、逃げてないよーっ!?

怒りに満ちた声に、あたしはそう声を上げようとする。
でも揺れ続けてる脳のせいで、上手く言葉が掴むことが出来なくて、
掠れたように息を吸うのが精一杯。

何これどうしよう……助けてセルティ!
でもケータイはバッグの中だよー!!

「ちょっ、待て待て待てーっ!!ちょっと待て、お前、その子、違うって!!
 お前が追ってたのはこっちだ!!」

「…………え?」

遠くから慌てたような声。
それが聞こえたあと、ふと呆けたような声がする。
頭をがっしりと掴んでいた掌が、怯えるようにびくりと震えた。

「……あ、」

何かに恐怖するような掌の震えと声に、何だか胸の内がざわつく。

その様子だと間違えただけなんでしょ……?
サンシャイン通りはいつも人通りが多いからよく見えなくて、きっと、
狙いがズレただけなんでしょ?

思わずそんなことを考えて、あたしはようやく気がつく。
まったく “痛くない” ことに。
掌で頭を鷲づかみにされて、きつく圧迫されてる。
なのに、まったく痛くないっていうのは流石におかしい。

ゆっくりと。
両腕を持ち上げて、頭を掴んでいる手にそっと触ってみた。
酷く震えた手を、自分の頭から優しく外して下ろす。

サングラスの奥の強張った瞳。
あたしと目があった瞬間、呆然と見開いた。





驚いたよ、何にって、偶然に。

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