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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

5万企画 3 双子編


※5万企画第3弾
※ジェームズとハリーで双子パラレル
※以前書いた誕生日記念のレベンジ(になったのかどうか)



<双子編>

IF~ハリーとジェームズが双子だったら・兄の決心編~




「ハリー」

横から呼ばれて、ハリーは顔を上げる。
久々に見ると言っても過言ではないような真剣な表情に、
ベッドの上に寝そべりながら読書をしていたハリーは驚いた。

「なに?」
「話があるんだ」

真面目な様子を見たハリーは、栞をはさんで本を閉じる。
くつろいでいた体を起こし、きちんと向き合う。

「明日で夏休みが終わるだろう? そしてホグワーツに戻ったら
 僕らは5年生になる」
「うん」

重々しく話し始める内容。
また1年が過ぎたのだから何を当たり前のことを……と、
ハリーは首を傾げる。
しかしどうやら話にはまだ続きがあるようで、黙って頷いた。

「だからね、僕は決めたんだ」
「決めたって?」
「ふざけるのを止めて、リリーに告白するよ」

ハリーは瞬いた。

「無理だと思う」
「ハリー! 何でそんなこと言うんだ! ちょっとはお兄ちゃんの
 恋を応援したい協力しようって気はないのかい!?」
「えー」

即答したハリーは読書に戻ろうとする。
けれど、ばしんばしんとベッドを叩かれて抗議されてしまい、
つい面倒そうな声を上げる。
読書を諦めることにしたハリーは、しぶしぶ寝そべりかけた体を
もう一度起こした。

恨みがましそうに睨まれて、ハリーは辟易する。
学校で常に振り回されているというのに、どうして実家に帰って
来ている時にも振り回されないといけないのだろうか。
とはいえ、相手は兄なのだから仕方ない。
ハリーは軽く溜息をついた。

「まったくジェームズは……」

書を中断させたのは、ハリーの双子の兄であるジェームズ。
生まれた時から一緒だった2人は、一卵性双生児であることから
顔がとてもよく似ていた。

とはいえ、全てが瓜二つというわけではない。
くしゃくしゃした黒髪や眼鏡をかけていることは同じであるが、
ジェームズは父親似のハシバミ色の目、ハリーは母親似の緑色の目。
何よりハリーの額には、奇妙な稲妻形の傷跡がある。
1人でいる時や後ろ姿の時に間違えられても、2人でいる時や、
正面から見られた時に間違えられることはなかった。

性格にしても、一卵性の双子としては珍しいほど似ていない。
ジェームズはリーダーシップを持ち、クィディッチや悪戯が好きで、
学校ではいつも注目の的になっている。
一方でハリーはクィディッチはしても悪戯などはせず、努力家で、
目立つことが好きではなかった。

「昔からずっとリリーに告白する告白するって言ってるのに、
 それでもふざけた態度しか取れないのはジェームズだろう?」
「うぐっ……! だ、だって……いざリリーの目の前に出ると、
 僕のテンションが天に舞い上がってしまうんだ!」
「テンパってるだけじゃないか。しかもそうとは見せないように
 変にカッコつけようとしてるしさ」
「かっこいい所は見せたいじゃないか!」
「スニッチいじって歯を光らせても、ただの変人だよ」

頭痛がしてくるような気がして、ハリーは米神をおさえる。

傍目からすれば、ジェームズが同級生のリリーのことが好きだと
よく分かる。
しかしリリー当人からとしては、アプローチされているというより
振り回されているとしか思えないのだろう。
それでも真面目な性格からか、いつだって騒ぎの中心にいるジェームズを
放っておけず、怒りながらも追いかけてくるのだ。

「だいたい、ふざけるのを止めるって言っても、悪戯するのは
 止めないんだろう?」
「うーん……考えてはいるんだ」
「ええっ?」

もちろん――という答えが返ってくるとばかり思っていたハリーは、
不意をつかれてしまう。
慌ててジェームズを見やれば、ジェームズも驚くハリーを見て
瞬いていた。

「悪戯止められるの? 嘘だろう?」
「嘘って――あのね、ハリー。僕だって別に悪戯中毒ってわけじゃ
 ないんだから」
「だって……信じられないよ」
「あー、それはシリウスたちにも言われそうだけどね」

肩をすくめて、苦笑するジェームズ。
ジェームズが真剣であることはちゃんと分かっていたつもりだが、
まさか悪戯を止めることまで考えているとは思わなかった。
さすがにハリーは眉をひそめた。

「一体どうしたの、ジェームズ。今までだって、そこまで考えて
 いなかったじゃないか」
「うん……」

ジェームズはハリーの横に座る。

「夏休みが始まる前……セブルスがさ、僕に言ったんだよ。
 いつまでもヘラヘラしているなら全力でリリーを引き離すって」
「……セブルスが……」

リリーの幼馴染で、ジェームズと対立している青年。
特にジェームズがリリーに近づくことを良しとしておらず、それゆえに
悪戯の標的になることが多かった。

その彼が、自分からジェームズに警告するとは――。

「ああ、ついにセブルスも覚悟を決めてきたのかって、思ったんだ。
 全力でって言うからには形振りなんて構わないだろうし――リリーの
 意思さえ、無視するかもしれない」
「うん……確かに……セブルスなら考えるかも」
「そうだろう?セブルスの警告あってっていうのは癪なんだけど、
 リリーのことを無碍にされるのはもっと嫌だからね……。そろそろ
 僕も本気で向き合わなくちゃいけなくなったんだ。だからこそ、
 悪戯も抑えていくべきかなって」
「そうだったんだ……」

ジェームズがハリーを振り返る。

「――セブルスのことは言わないけど、それ以外はきちんと
 シリウスたちに言おうと思う。ハリー、応援してくれるかい?」

少しだけ、不安そうな色が見て取れるジェームズの瞳。
ハリーは優しく笑って頷いてみせた。

「兄さんのこと、応援しない弟がどこにいるのさ」
「うん。ありがとう、ハリー」
「大丈夫だよ。兄さんがテンパってカッコつけそうになったり、
 つい悪戯しそうになったら、僕が全力で止めてあげるから」
「え……ハリーの全力ってちょっと怖いんだけど……」
「全力でね!」
「う、うん……」

あまり嬉しくなさそうに項垂れるジェームズ。

長年抱えていた初恋を叶えたいと思うのは、当たり前のこと。
むしろ双子として、好みの女性のタイプが似なくて良かったと
思ってもらわなくては。
一番近くで半身の感情を受け止め続けたハリーは、笑った。





END.

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