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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

幸せの白昼夢(ハリポタ)


※07年ハリー誕生日記念





「……リー、ハリー……」
「ん……」

名前を呼ぶやわらかな声。
暖かな手の感触。
軽く揺さぶられる肩。

優しい人。
とても、優しい人。

「ほらハリー、起きて」

ゆっくり目を開けると微笑する影。
眼鏡の奥の楽しげな、ハシバミ色の瞳。
ぼんやり見上げていると、くしゃりと頭を撫でられる。

「おはよう、ハリー」
「……おはよう」
「ハリーが寝坊なんて珍しいね。眠れなかったかい?」
「……ううん……ただ……」

ただ、嫌な夢を見てただけなんだ。

暗い部屋の中で一人でいるんだ。
誰も僕のことなんか見てくれなくて。
誰も僕のことを知らないままで。
ずっと一人で、暗い夜を過ごしてるんだ。

「怖かったかい?」
「……悲しかった……だけどね……」
「だけど?」

手紙と一緒に来てくれた。

そして新しい朝が目覚めたんだ。
そこに僕のことを見つけてくれた人がいた。
そこに僕のことを知ってくれる人がいた。

「じゃあ、一人じゃなくなったね」
「……うん。嬉しいんだ」
「そうかそうか」

大切に想ってくれる人がいる。
大切にしたいと想う人がいる。
こんなにも、涙が出るほどに幸せだと言える。

「ハリーが嬉しいなら、僕も嬉しいよ」
「あら、もちろん私も嬉しいわよ?」
「おっと」

少し拗ねたような声に首を動かす。
朝日に照らされた赤毛が、ふわりと揺れる。
くすくすとなだめる笑い声。

「それはもちろん。僕たちはハリーの幸せが嬉しい」
「そうよ。ハリーの幸せは私たちの幸せだもの」
「……うん……すっごく幸せだよ」

だってそばにいてくれる。
だってそこにいてくれる。
こうして僕を抱きしめてくれる。

ねえ、僕は幸せだよ。

「さあハリー」
「ハリー」

優しく名前を呼んでくれるから。
僕はもっともっと、幸せになれる。

「おはよう、父さん、母さん」
「おはよう、僕たちの可愛いハリー」
「お誕生日おめでとう、ハリー」





「起きたのか? ハリー」
「ごめん……うたたねしちゃった」

ごしごし目をこする。
くすりと笑う彼。

「いや、構わない。徹夜でどんちゃん騒ぎだったしな」
「そうだよ、ハリー。でも呆れたね、本番は今日なのに……」
「そう言うな。私たちもそんな経験はあるだろう?」

彼が苦笑しながら言う。
呆れた彼は肩をすくめた。

「ことあれば、ジェームズが前夜祭やろうってね」
「おかげで寝不足が絶えなかったな」
「まったく。……うん……? ハリー、どうかしたのかい?
 何だか、すごく幸せそうな顔してるよ」
「幸せだからかな」

きょとんとして問いかけてくる。
それに僕は笑って答えた。

「夢でジェームズやリリーに会ったのか?」
「うん!」





END.

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