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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

太陽の嫉妬(ポケスペ/レイエ)


 


――ドサドサドサッ!!



「わあああっ!?」

急に目の前が真っ暗になり、続いてひどく冷たい塊の中に
イエローは閉じ込められる。
何とかはいでて、溜息をついた。
枝葉に降り積もっていた雪が落ちてきたらしい。

イエローは頭や服についた雪を振り落とし、慌てて辺りを見回す。

いきなり響いてきたイエローの声に驚いたのか、木陰からは
鳥ポケモンたちが飛び立ち、地上では巣で眠っていたポケモンたちが
あくびをしている。

思わず近くにいたポッポに確認してみた。

「……トキワ、だよね……?」
「ポ? ポ、ポッポ!」
「……だよね」

もちろん周りは見知ったトキワの森の中。
イエローは不思議な夢か幻でも見たような気分になりながら、
ポケモンたちの声に気をつけながら道を辿る。

「異常は――なし」

昔は当たり前のことだからとそうでもなかったが、長い旅をする間に
ポケモンたちの声を意識して聞くようになってからは、トキワに
帰ってきてからも耳を傾けるようにしている。

そのおかげか、この間は親元を離れてしまい、迷子になっていた
コラッタを見つけることも出来た。
もちろんすぐに見つかったのは、チュチュたちや、トキワに棲む
ポケモンたちが協力してくれたおかげでもあるが。

イエローはそんなポケモンたちのことを思って、思わずくすりと微笑む。

「イエロー!」
「っ! レレレ、レッドさん!?」

大きく茂みをかき分けて出てきた青年の顔を見て、イエローはびくりと
肩を揺らして驚いた。
何せ、そこにいたのはつい昨日シロガネ山へと修行へ向かったはずの
レッドがいたのだから。

「レ、レッドさん、どうしてここにいるんですか!? だって、
 昨日、シロガネ山に修行に行ったじゃありませんか!」
「それがさぁ、途中でゴールドに急用が入ったらしくて引き返して
 きたんだよ。トキワにもついさっき着いてさ」
「そうだったんですか……」

どきどきする胸をおさえ、イエローはほっと息をつく。
修行とはいえ、イエローはどうしてもレッドがマサラやトキワから
離れていくことが心配になってしまう。

きっと、レッドが行方不明になっていた時のことを思い出して
しまうからだと思っている。

今は何も危険なことはないというのも分かっているが、どうしても、
不安や寂しさは拭えない。
もちろん旅立つレッドを止めることも出来ない。
レッドの修行の邪魔をしたくはないからだ。
矛盾しているなと、イエローは内心で苦笑する。

「……? イエロー、何で麦わら帽子かぶってるんだ?」
「あ、これですか?」

ふと、レッドはイエローの頭を見て首を傾げる。
ある事件で麦わら帽子を取り、レッドに女だとバレてから、イエローは
トキワから出るほどの遠出をする以外ではあまりむぎわら帽子を
かぶらなくなっていた。

「もしかして遠出する所だった?」
「いいえ。いつ雪が降るか分からなかったので、一応です」
「なるほど……まあ、この天気だったら大丈夫そうだけどな」
「はい、そうですね」

ふいにイエローはレッドを見やり、くすりと笑う。

「どうしたんだ?」
「……いえ……。さっき、ちょっと人に会ったんですけど、その人
 レッドさんと同じ名前をしてたんです」

イエローは先ほど出会った青年の姿を思い出す。
一緒にいる間は彼のピカチュウが積極的に話をしてくれていたため、
助けてくれたらしい彼とはほとんど話すことがなかった。
彼も自分からは話そうとはしていなかった。

けれど、表情や感情は季節のように移り変わり。
何を思い、感じているのかすぐにイエローは分かった。

優しくて、優しくて――繊細な心を持っているひと。
まるで彼のことを話してくれた子のような。

「ポケモンみたいな人でした」
「……ふうん……ポケモンね……」

声低く、面白くなさげに相槌を打ったレッドは、くすくすと
微笑み続けるイエローをしばらく眺めていた。
しかし不機嫌が頂点に達してしまったのか、ぐいっとイエローの
腕を引いて、ぎゅっと抱きしめる。

「わあっ、あああ、あのっ!?」
「それってどこのレッドって奴なの? 俺より強い?」
「えっと……レッドさん?」
「何も言わなくても、ちゃんとイエローが分かってくれる奴ね。
 そんなの、ここにいる “レッドさん” だけで充分」

むすっとした顔でそう言いきるレッド。
イエローは唖然とレッドを見上げていたが、意味が分かってきたのか、
だんだん顔が赤く染まっていく。

普段は各方面から鈍いと言われ続けるレッドのそぶり。
どちらかというとイエローがヤキモキする方が圧倒的に多い。
特に、レッドに好意を寄せているのであろうカスミ絡みの時は余計に
焦ってしまう。

けれど、今日はいつもと様子が違う。
どうやらレッドの方がヤキモキしているようだ。
それがとてつもなく恥ずかしくて、嬉しくて堪らない気持ちになりながら、
イエローは対抗する。

「……ぼ……僕だって……旅に出るほど探したいって思ったのは、
 ここにいるレッドさんだけです……っ!」
「そんなの俺だけでいい」
「……何度も行方不明になられたら困ります……」
「でもそうなったら、また探してくれるだろ?」
「わ……分かってるでしょ!」

レッドがいなくなってしまったら。
絶対にまた探すのだと、イエローは確信している。
各地を訪ね歩いて、彼の行方を捜すだろう。
あの時のように。

「でも今度は怒ります。僕だけじゃなく、グリーンさんもブルーさんも、
 心配した皆が怒りますからね?」
「それは簡便」

苦笑したレッドはイエローを離すと、手を取った。

「行こう。寒いしな」
「……はいっ」





END.

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