※男主人公
――いつぶりだろうか?
こんなにぐだぐだになるまで、疲れて寝不足になったのは。
椅子から立ち上がる気力もなければ、煙草をふかしたいと思いつつ、
このままずっと動きたくない気がするほど。
机に突っ伏した頭が、ガンガン鳴ってぐるぐる回ってるように感じる。
「朔夜? おい、何してんだよ?」
……銀八の声が聞こえるけど、だるすぎて起き上がりたくも
声も上げたくない。
「返事が無いーただの屍のようだーとか言ってほしいワケ?」
んなわけないだろう阿呆。
そうやって、心の中だけで言ってみる。
以心伝心なんて所詮、嘘っぱちだと思っている俺たちだから、
どうせそんなこと伝わらないんだろうがな。
「おいおい……ん? って、まさか、ずっと仕事してたのか?」
多分、電源入れっぱなしのスクリーンセーバーになってないパソコンの
デスクトップを見たんだろう。
むしろつい先ほどまでやっていたのが、仕事に入るのかどうかを俺は
聞きたいけどな。
どうせ徹夜してやっていたことは仕事のうちに入らないから、
残業手当てに期待はしてない。
むしろ、あの校長なんかにそれを言ったとしても絶対に無駄だな。
「……タチ悪い、ウィルス……」
「ウィルスー? そんで朝まで退治してたのか?」
俺が? はっ!
「2分で駆除……セキュリティ、難易度上げて……プロテクトの強化……」
この原因は、昨日授業をしてた生徒らに作業が終わった奴から
ネットしてていいと言った俺だ。
一応想定してたから、変なサイト見れないよう壁張ってたのに、
奴ら……どんなサイト見たんだよ。
「銀八」
「ん? なんだよ」
「ひざまくらして」
「何ッ!?」
銀八が何か言う前に突き飛ばす。
床に尻餅つかせて、俺は太ももの上に倒れこんだ。
文字通り、言った通り、俺は椅子からふらりと落ちて倒れこむ。
痛えとか何とか銀八が悲鳴上げたような気がするが、この際、
あとで謝ろうと思う。
眠い眠い眠い眠い眠い眠い眠い眠い眠い眠い眠い眠いんだ。
俺はすごく眠いんだよ。
「おい! 朔夜! ……ったく……しょーがねーなー」
仕方ないから、俺の膝枕に徹底してくれ。
起きてすっきりしたら甘いものでもジャンプでも好きなもの、
買ってやるから。
だから、今日はこのままでいてくれよ。
それにしてもいつもは暇すぎるけど、今日ほど授業ない日が
ありがたいと思ったことはないな。
…………あれ。
でも、そういえば銀八は授業あるのか?
END.