「本当にお加減を知って欲しいのですが、朔洵様?」
「何がだい?」
「こうして、わたくしを閉じ込めていらっしゃることを」
窓はない。
壁は三辺が厚い漆喰、一辺が太い木格子。
小さな扉には頑丈な南京鍵。
足首には大きな枷、鎖が繋ぐ先には重い鉄球。
「閉じ込める? 何を言っているんだい、愛しい妹……琳音」
「この状況が監禁でければ何とおっしゃるのでしょう、朔洵様」
「もちろん護っているのだよ、可愛いお前を」
格子の外には一人の男。
薄微笑を浮かべて優雅に立つ。
瞳はここではないどこかを見つめる。
小さく小首を傾げた。
「護っている……? ……わたくしを一体何から、護る必要があると、
おっしゃっているのでしょうか」
「ふふ、もちろんお前を害なす全て……だよ、琳音」
「そうですか。それではまず、朔洵様ご自身をお始末なさりませ」
くすくすと楽しそうな笑い声。
けれどやはり、視線はここではないどこか。
所詮上辺だけの表情。
心からのものではない。
「今日も手厳しいね、琳音」
「朔洵様にお優しくする必要が、ありますのでしょうか?」
「そうだね、琳音に優しくされても嬉しくないかな」
優しくするのは好意からではない。
それを知っていれば受けようとはしない。
だから互いに優しくはしない。
する必要はない。
「……さて、私はしばらく出かけてくるよ、琳音。それと、何度目かな?
私のことは兄上と呼ぶように言っているだろう?」
「朔洵様、二度とお顔をお見せにならないで下さりませ」
NEXT.