ひゅんひゅんと風を切る。
腕の横の風、頭の上の風、足の後ろの風。
高く高く放り投げた小さな刃が、虚空できらめいた。
今度は左手でその刃を受け止めて。
右手の刃を軽く前へ投げる。
ドスッ
受け止めた左の刃は、振り向かず後ろに投げる。
ザシュッ
前後から歓声が上がり、血雨が降ってきた。
今日はとても素晴らしい天気だ。
“ゲーム” をするのに、僕の芸を見せるのにピッタリな日。
さあ、お次は何をお見せしようか。
短剣のジャグリング……それとも炎をまとう長剣にしようか。
それともピストルで、離れた所の “ピース” の頭をうちぬく?
だったら、弓矢の方が面白いかもしれないね。
今日は “ピース” のお客様がたくさんいらっしゃる。
失敗はできないな。
ごゆっくりと、僕の芸をお楽しみ下さい。
…… “マスター” は僕にまったく拍手なんてしてくれないけれど。
でも、これでも芸はできる方だとは信じているからね。
できないのなら、この “ゲーム” という地のステージには
こうして立たないよ。
ハンパな芸で、ステージに立つことはプライドが許さない。
「やあ、今日もたくさん芸を見せてくれてありがとう」
「ピエロにコエをかけてもらえるなんて、嬉しいですよ」
「俺は “楽しんで” “楽しませる” から」
「それじゃあ、もっと見ていって下さいね」
僕は “ピエロ” と同じようで同じではない。
僕は “芸” をしているから、彼とは違うのかもしれない。
“ゲーム” の “キャラクター” は同じだけれども。
きっと “キャラクター” である僕たちは、僕たちなりの生き方が。
誰もがステージの、ヒーローにならないとしても。
「お客様、技が成功した暁にはどうか盛大な拍手を――。」
僕という “大道芸人” はプライドをかける。
END.