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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

第4章 台風4号 ワタシタキオク(2)





「目が覚めた?」
「――侑子さん?あれ、私どうし……?」
「寝不足で倒れたのよ。体調は大丈夫だけれど……どうする?
 まだ寝てる?」
「……いえ……大丈夫です」
「そう」

ベッドから身を起こす私を、侑子さんは静かに見やってる。
寝不足で倒れたって、何か情けないやら恥ずかしいやらで複雑だな。

あ。

っていうことは、確実にエリオル君の目の前で倒れたってことだよねっ!?
うーわーっ!!! 何だその失態!!
初対面だっていうのに、かなり恥ずかしいじゃん!!!

思わず、内心で激しく悶絶する。
小さく震える私を、侑子さんは小さく笑いながら眺める。

「それじゃあ起きた所で。雪里、早速やってほしい仕事があるんだけど、
 いいかしら?」
「あっ、はい。何ですか?」
「服にね、きちんとアイロンをかけてほしいの」

服にアイロン?

侑子さんにつれられて宝物庫に行く。
すると、マルとモロがキャスター付きの洋服がけを引いてきた。

ハンガーにかけられてるのは、4着の見慣れない服。

それは……何ていうかもう、どんなに形容しても……ボロッボロ?
防具がついてる黒いマントに、ファー付きの白く長いコート。
白い女の子の服はそうでもなかったけれど、茶色いマントの服だけが
汚れてるというより、かなりボロボロの状態だった。

長い間愛用してたのか、それともそうなるような所にいたのか。
それは私には分からないけど……。

まあ、とりあえず与えられた仕事なんだし。
ちゃっちゃっとアイロンがけ、しちゃいますか!

マルとモロに服を取るのを手伝ってもらいながら、アイロンをかけてく。
きっと君尋ならこういう時も、布の性質とか型崩れとか気にするんだろう。
私が男だったら絶対嫁にもらってるぞ。

「……ん?」

ご……ごめん君尋……。
今一瞬だけ、君尋が本気で“男”じゃなく“女”だって勘違いしてた……。
だって私よりも家事が得意だし、まったく見習わせたい!!

見習わせたいって……誰になんだろう……?
……まあ、別にいいか……対価で渡した記憶なんだろうし。

「ふぅ」

これってきっとアレだよね?

記憶喪失の人が、あたかも思い出したかのような言動をするやつ。
何だか最近になってから、色々と考えごとしてる時とかに、
そうなってるのが多いんだよねえ。
ようやく自分でも不思議だなって気づいた時には、もうすでに
『あれ?』『何で?』っていう状態になってるし。

私が侑子さんに渡した対価は記憶――。
そう聞いた時に侑子さんは、そうとも言えるし違うとも言えるって
言ってた。

もし、対価として正式に記憶を侑子さんに渡しているんなら、
こんな風に感じることもないはず、だろうけど……うーん……。





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