『いらっしゃい ♪』
一瞬、ずっこけるかと思った……。
ふと目を開けると、見たことないほど絶世の金髪美女が
とっても素敵な笑顔で私の目の前に立っていらした。
とてもとても楽しそうに笑っている謎の絶世の美女は、
大きな金色の椅子に腰掛けて私を見てる。
辺りを見回すと、真理といた白い空間からどこかの宮殿の中のような
広い場所に移動しているようだ。
こういうのには素人な私でも分かるほどに、地味すぎず、かといって
派手すぎないという豪華なのにわりと落ちつく空間。
おそるおそる、もう一度美女を見る。
楽しそうな笑顔が誰のものか、私はすでに断定してた。
「初めまして、私はセツリ=ナカノです。――エル様ですね?」
『……くすくす。……さすがに飲み込みが早くなってるわねえ。
まあ、緊張しないで気楽になさいな?』
気楽って言われても…… L 様の前で……。
世界の創設者、全ての者の母、魔王の中の魔王。混沌を統べる者。
悪夢の――金色の魔王。
ロード=オブ=ナイトメア様。
『鋼の錬金術師』 の次は 『スレイヤーズ』 の世界なのか……。
L 様の様子からすると私をあっちこっちの……っていっても、
D .グレと鋼の世界だけだったけど……、とりあえず私を異世界に
召喚してた張本人ではないんだろうけどね。
L 様は満足そうにひとつ頷いてから、私を見据えた。
『向こうから来たばかりなのに、慌しくして悪いわね。セツリにちょーっと
頼みごとをしたいのよ』
「……私に頼みごと、ですか?」
『ええ。貴女にはこれを見つけてきてほしいの』
ふっ、と L 様が差し出した手。
そこに映像のような、残像のようなものが映し出される。
片手におさまるくらいの、銀色に光る楕円形の石。
……何だろう?
すごく綺麗に光ってるけど……。
『これ、すごく大事なものなのよ。でも、世界が創造される時に出来る
歪みの衝動でその世界に落ちちゃったのよね。もちろん出来ることなら
あたしが直接行きたい所なんだけど…… “創造主” っていうのは、
自分の創造していない所に勝手に関わるなんてことは、あまり出来ないの。
だから、あたしの代わりに探してきてほしいというわけ』
ああ、そういうことなのか……。
今回はこれが終わったら、移動する感じなのかな?
最初から明確な目的を持って異世界に入るの、今回が初めてだね。
その時。
真理に言われた言葉が頭の中で蘇った。
『いーんだよ、別に今は何も分からなくても。
お前はまだまだ放浪しなくちゃならないんだからな』
NEXT.