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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

傍観の円舞曲-円舞曲- 第2曲



 

カランカラン……



鈴の音が、明るい静かな店内へと響く。
カウンターの向こうのロッキングチェアに
座っていた子供が振り向く。
絵本か何なのか、かなり分厚い本を手にしている。

「いらっしゃいませぇー」

店へと入ってきた男女二人は少しだけ
驚いたように子供を見やった。

「おじさーん! おじさん、おきゃくさぁん」

ドォォン、と爆発音が声の代わりに返事をする。
二人はその音を聞いて呆気にとられたようで、
声も出せず硬直してしまったらしい。
しばらくしてドアが開き、眠そうな青年が現れた。

はたから見れば客の二人と似たような若い年齢に
見えなくもないのだが、果たしてそれが正解なのか、
知る術を持つのは本人しかいない。

「いらっしゃいませ。初めてのお客様ですが……
 何をお求めですか?」
「え、えっと……客というか頼まれ物を取りに来ただけ
 なんですけど――黒と青のインクを……」
「インク? ……ああ、分かりました」

にっこりと青年は笑うと、カウンターの隣の棚から箱を持ち出した。
すると子供がカウンターの下へ潜りこむと、
ガサガサと茶色の紙袋を取り出して青年に渡した。
よく出来ましたと子供の頭を撫で、袋に箱を入れて
口を二回折ってから少女の方に手渡す。
少年の方は、きょろきょろと店内を見回していたからだ。

「露鬼君のアパートの方ですか?」
「へ?」

青年の言葉に、やっと少年がこっちを振り向いた。

「そのインクは露鬼君が注文したものですから……」
「そーです。僕は東雲明 (ひがしぐも あきら) っていいます」
「初めまして、私は青月椿 (あおつき つばき) です」
「私は 『小夜曲 (セレナーデ) 』 店主の、フェルと申します。
 この子は雪里と申します」
「はじめましてー」





どうぞこれからごひいきに、というたどたどしい
雪里の言葉に手を振り二人は出て行く。
ふう、という音に雪里が見上げると、フェルは少し苦笑していた。

「まさかあの子達がね……。とりあえず露鬼君の影響なのかな?」

ただの “人” なら。
店を見つけることも入ることも、出来ないのだから。

「つばきおねえちゃんとあきらおにいちゃん、
 はいっちゃだめなの? おじさん?」
「そんなことはないよ。ただ面白くなりそうだと思ってね」





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