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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

傍観の円舞曲-ワルツ- 第7曲



 


「……矢文か……。久しぶりに見た気がするね」

飛んでいった方向は、向かいのアパート。
どうやらタイミングよく窓を開けていたようで、
ガラスは割れなかったようだ。
ロッキングチェアに座っていた雪里が振り向いた。

「おじさん、やぶみってなぁに?」
「矢に手紙をくくりつけて、飛ばす矢のことだよ」
「せつりもおくれる?」
「もちろん。誰に送りたいんだい?」
「さいきんあそんでないから、どぅがおにいちゃん!!」

ぱっと顔を輝かせた雪里。
フェルから一本の矢を受け取ると、駆け足で部屋へ戻る。

思わずくすくすとフェルは笑った。
数日たった頃に、彼は矢を持って飛んでくるだろう。
口では何だかんだと言いつつも、ちゃんと雪里と
遊んでくれるのは分かりきっているのだ。
面倒見の良い彼のことだから。

「……それにしても、今回は露鬼君が怒るだろうね……」



カランカラン……



「いらっしゃいませ。……おや」

くすり、と笑ったフェルはその客を見やる。
客は軽く頭を下げた。

「苦手ならそんなことをしなくてもいいと、
 いつも言っているはずなんだけどね。私は」
「あー、何かフェルさんにはクセってか……そんなんです」
「今度から新しい学校でしたよね? 頑張って下さい」
「はい」

こくり、と頷いた彼に微笑んだ。

「雪里ー」
「なーに、おじさん」
「壊助 (かいすけ) 君が遊びに来てくれたよ」

「ほんとー!?」

「うおっ! 雪里、飛びつくなっての、おいっ」
「やーだー♪」

雪里の事をはじめ “ゆきざと” と呼んだ青年と。
壊助の事をはじめ “こわれだすけ” と呼んだ雪里。
フェルは紅茶を淹れに、部屋へと戻る。

ここは微笑ましいが、彼らの所はそうもいかないだろう。





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