クラスシリーズ ３

　

　

目の前がかすんでいく。
体も上手く動かない。
口も満足に利けなくて。
ああ、何てもどかしい。


息が小さくなっていく。
焼ける心臓は今にも止まる。
指さえ空をつかまずに。
ああ、何てなさけない。



つまらない人生だったと思う。
“普通” は素晴らしいけれど、それだけで。
思いがけないことは何も起こらなかった。

ただそれだけが残念で。
とてもとても残念で。



最期までこの手は空虚なまま。

水もつかめない。
星もつかめない。
時も、過去も、未来も。
この風さえ。

何もつかめないまま。



気まぐれすぎる悪戯な風は、
本当の気持ちを伝えてくれる事はなく。


ため息さえつけない。
命令をきかなくなった身体がにくい。



どうせなら、どうせなら。



今くらいは。
風をつかませて。





「風間……今すぐ病院行って風邪を治してこい。
　このままお前がいると、学級閉鎖になりかねんからな」





出席番号３番
風間 恵太郎（かざま けいたろう）