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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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政宗-3




ぱちん、ぱちん

縁側に座りながら手のひらの上で遊ぶように、
扇を開いたり閉じたりする。

これが鉄扇だったら、まだ片手じゃ無理だったろうけど。
あれって結構、見た感じよりも重いんだよねえ……。
よくあの細い片腕で、振り回せるものだよ。
……とかって本人に言ったら、殴られること必至だね。

「 Hey, あきら、何してんだ?」
「ああ……政宗に小十郎」
「こんな所にいたのか、あきら

ふいに声をかけられて、ゆるく振り向く。
深い青の着物を見苦しくない程度に着くずし、ずんだもちがのった
皿を持った政宗がいた。
その後ろにはいつものように、小十郎。
政宗は隣にどかっと座ると、皿の一枚を渡してきた。

やったね! これ政宗の手作りだ!

後ろにいた小十郎がお茶を淹れ、湯のみを隣に置いてくれる。
そういえばもうすぐ野菜収穫するって言ってたんだっけ。
食べさせてもらってるし、あたしも手伝わないとな。
小十郎の野菜、すっごく美味しいしね。

「で?」
「……あーいや、特に何ってわけじゃないけど……この扇、
 友人から借りっぱなしだったなーと思ってさ」
「扇ねえ……何か書いてあるな?」

ひょいっと政宗が手の中の扇を覗き込む。
少し眉をひそめて首を傾げる様子に、あたしは笑んだ。
扇の文字は 『大一大万大吉』 。

「 All for one, One for all. 」
「 Ah... 」

すると政宗は、納得したように頷いた。

「大一大万大吉……一人が皆のため、皆が一人のために働けば、
 天下は幸せになる」



あいつは、信じられないと言っていた。
あいつは、試してみるかと言っていた。
あいつは、友情を貫こうと言っていた。

知遇を得て、利を超える義を見つけた。
あたしたちは利に打ち勝った。

――泰平は訪れた。

あとは、どれ程の滞在期間を延ばしていけるか。
大変なのは戦じゃなく、平穏を持続させていくことだ。

民のため、国のため、日の本のため。
平穏をどこまで長く延ばせていけるか――。



「思いは同じなはずなんだけどねー」



勘違いをしている。
なまじ力を、威を持つために、すべてを手に入れられると。

一国を担う王は、ただ一人ではないことを忘れている。
だから気づく者がいても、言うことすら止められてしまう。
だから、抗うしかない。

己の力を、威を知る王でさえ滅多なことは言わずに、
信じることが出来ずに口を、心を閉ざしている。
だから勘違いをしてしまうんだ。
思いは同じなのに勘違いをしたまま、抗う。

――信長様と光秀みたいに。



「っていうか政宗、休憩がてらあたしとずんだもちを食べに来ただけじゃ
 ないでしょ? あたしに何か話でもあったんじゃないの?」
「 Oh, そうだったそうだった。実はな、今度正式に武田と上杉に同盟を
 申し込むことにしたんだ」
「……信玄公と謙信公に、同盟を? ……そりゃまた……
 思いきったよーな」
「いや、同盟はお前がここに来る前から考えてたことだった。ようやく
 この間の戦で勝ったことだし、申し込むには今が良い Chance だと
 思ってな」

この独眼竜は、知っている。

一国を担う王は一人ではないことを。
その手が何を出来、その手が何を持て、その手が何をするか。
その背に重い命を庇い、誰が己の命を守り、支えるのか。

この男が愚かな人間だと気づいたなら。
あたしはすでに、ここから去ってるだろうしね。

「 Good idea! お二方なら味方には申し分ないし、心強い!」
「だろ? 武田には真田や猿、上杉にはつるぎもいるしな」

――天下泰平。
この男なら成し遂げられると、信じている。

大一大万大吉。



『義、ではないでしょうか』
『一人が皆のために、皆が一人のために働けば天下は幸せに
 なるという』
『人は生きるべくして生きるのさ』
『同士――と、呼ばせてもらいましょうかね』

『くく……。――で、あるか……』
『明智光秀様、ご謀反!』
『違う! 私はあの方が作る世界こそを見たかったのです!』

『わしは皆が笑って暮らせる世を作るんさ』

『友よ、勝ってくれ』



だからあたしは独眼竜、伊達政宗の下にいる。





その手に持てるものは
全てが重みを伴う

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