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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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第7章

 
 
 

「殺しては駄目だ。殺しちゃいけない」

ジェームズの手が、ハリーの声にぴたりと静止する。
シリウスがショックを受けたような唸る声で、ハリーに言う。

「だが、ハリー。こいつのせいで君はご両親を亡くしたんだぞ?」
「それは……分かってる……。だから城まで連れて行って、
 ディメンターに引き渡そう。こいつはアズカバンに行けば
 いいんだ。だから……殺すことだけは、やめて」

ひとつ、ハリーは息を吸う。

「……ただ僕は、父さんが――こいつみたいなもののために、
 親友が殺人者になるのを望まないと思っただけだ」

その言葉を聞いたジェームズ。
ふう、と小さく息を吐いてくしゃくしゃと頭をかいた。

これは“家族”と“親友”の差であるのかもしれない。
ジェームズは止まっていた手を静かに動かして、半壊したドアを
コンコンと軽くノックした。

「こんばんは。――懐かしいな……この部屋も」

誰もが沈黙していた部屋の中に、その声は妙に静かに浸透した。
はっ、として振り返る一同はもっと驚いた顔になる。
彼の名前を言おうとしても、何故か名前が頭に出てこない。

だがシリウスだけが、ゆっくりと大きく目を見開く。
信じられないというように何度も首を振る。

「……そんな……まさか……!!

その様子に、ジェームズはきょとんと首をかしげる。
するとしばらくしてから、思い出したようにぽんと手を叩いた。

「あーそういえば僕って、シリウスの前でこの姿になったこと、
 あるんだっけ?」
「……4年の時の……ハロウィーン……」

シリウスが呆然と呟いた言葉。
リーマスは驚いて、ジェームズは笑った。

「あー、そうそう!確かホグズミードに行ける日だったのに、
 ちょうど僕とシリウスが魔法薬学の罰掃除になっちゃってさー。
 だからシリウスには僕の透明マントを貸して、僕はこの姿で
 抜け出したんだっけ。い懐かしいなー。懐かしすぎてすっかり
 忘れてたけどね!」

けらけらジェームズが笑うと、部屋の中に変な沈黙が流れた。
ひとしきり笑い終えてから、ごほんと声の調子を整えて
ハリーの方を振り向く。
肩を揺らしたハリーに、優しくジェームズは微笑みかける。

「2人を止めてくれてありがとう。さすがハリーだ」
「え……?」

混乱するハリーにますますにっこりと笑いかけるジェームズ。
ロンもハーマイオニーも状況を判断出来ず、おろおろとしている。
それを見かねて、リーマスがストップをかけた。

「ちょ……、ちょっとだけ待ってくれないかっ!!シリウス?
 ……シリウスは彼を知ってるんだね……?」
「あ、ああ……本当ならここにいるはずがないんだが……一応、
 知っているには知っている」

青ざめたままのシリウスの曖昧な答え。
リーマスは疲れたように、頭をぐぐっと抱えてしまった。
だが長く親友をしていたため、リーマスには全て分かったらしい。
どうして、彼の名前が分からなかったのか。
彼の本当の名前は何なのか。

リーマスはくるり、とジェームズの方を振り向く。
あまり彼には似合わないジト目で、ゆっくりと尋ねた。

「……君は…………ジェームズ、かい?」
「いえーい!ムーニーくん、ピンポンピンポンだいせいかーい☆
 そうです、僕はジェームズ・ポッターくんでーすっ!」

信じられないようなリーマスの発言。
だが、等のジェームズは盛大な拍手を送る。
軽快なファンファーレが部屋の中に聞こえてきたのは
気のせいだと、誰もが思いこんだ。

あまりの軽さに、思わずリーマスとシリウスが脱力した。
その他の四人は、目が点になってしまっていた。

ぱちんっとジェームズは指を鳴らす。

すると、ふわりとジェームズの姿がみるみる元に戻る。
くしゃくしゃとした黒髪、ハシバミ色の澄んだ瞳、
シリウスたちよりは幾分若い顔立ち。
赤いブイネックのセーターに、黒いシャツと藍色のズボン。
それは、13年前のあの日と同じ服だった。

彼の姿に、ハリーは息を飲んで呆然を見つめる。

「――と……父さん……なの……?」

ジェームズは微笑し、ハリーに近づいて頭を一撫ですると、
ぎゅっと強く抱き締めた。
固まるハリーの体は抱きしめられることに慣れていないからか、
それとも死んだはずの父親だからなのかは、分からない。

「そうだよ、ハリー」
「……あ……」

優しく呼んでやるとゆっくりと体の緊張が解れてくる。
息子を抱き締めるのは13年ぶりだった。
そして“お父さん”と呼ばれるのにいたっては初めてである。
ジェームズの胸の中に、じんわりと温もりが広がった。

「い、生きて、たの……?」

顔をくしゃりとゆがませて見上げてくるハリーの頭を
ゆっくり撫でながら、少しだけジェームズは切なそうに微笑む。
けれど、はっきりと首を横に振った。

「……ここでは死んだことになっている。今回だけ特別でね」
「とう、さん……」
「今まで辛い想いをさせて本当にすまなかったね、ハリー。
 こうして会えて――とても嬉しいよ」

“今回だけ”という言葉に一瞬泣きそうな顔を浮かべるハリー。
もう一度、ジェームズは優しく抱き締めた。
今度はハリーからも、ぎゅっとしがみついてきた。
そのままの体勢で、ジェームズは顔を上げてにっこりと笑った。

「久しぶりだね?シリウス、リーマス、ピーター」





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