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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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蒼紅 12


戦いの蒼に再会の言葉




ハリーより軽傷ですんだ俺の左手は、約半日で治った。

薬が効いた証拠に、やっぱり治癒がめちゃくちゃ痛かったその手で
教科書を持って部屋に帰ろうとしてた時。
ホールの方で、誰かが俺の名前を呼ぶが聞こえた。
ひょいっと振り返ってみると、レイブンクローの授業の時に班分けで
仲良くなったホクトとレーチェがいた。

ホクトは新入生かその下ぐらい……しかも女の子じゃないのかと
見間違えそうになるほど、背が低くて可愛い感じの黒髪の男子。
レーチェは一歩引いた所から皆を見守り、楽しそうに微笑んでいる
金髪金眼の美人な女子だ。

「何だ? この人だかり……。2人とも、どうしたんだ?」

そう訊きながら、俺は2人がいる人だかりの方へと足を向けて近づく。
2人は少し不思議そうに首を傾げながら俺を見やる。
レーチェがくすくすと笑いながら、掲示板を指差しながら言う。

アオイはまだ知らなかったのね。ほら見て、今夜から “決闘クラブ” が
 始まるらしいわよ。もちろんアオイは行くわよね」
「“決闘クラブ”?」

(レーチェ? 今の強制デスカ?)

――っていうか、ああ、もうそんな時期だったのか。
そう思って声を上げたつもりだったけど、日本からの留学生って設定の
俺がそのことを知らないんだと良い方向に勘違いしたホクトが、
丁寧に教えてくれた。

「そうだよ。 “決闘クラブ” っていうのはね、その名前の通りに、
 魔法使いの決闘の練習をするんだよ」

俺は考える間も見せないで、大きく頷いた。

「もちろん行く」
「じゃあ、待ち合わせしようよ」
「そうだな」



ちょっと遅めに部屋を出たからか。

俺が大広間についた時には、もうほぼ全員の生徒が来てた。
この中から2人を見つけ出すのは、かなり不可能に近い。
……本当は大広間の前で待ち合わせをしていたはずなんだけど、
この騒がしい様子では先に入ってしまったと推測する。

(あとでちゃんと謝んなきゃな……)

そう思いつつ、丁度舞台の上で一礼する先生たちを見やる。

しかし……ロックハートはスネイプ先生をこんな茶番劇の助手にしようと
良く思ったよ……その勇気は恐れ入るな。

人聞き悪いだろうけど言っちゃえ。
今のスネイプ先生なら、殺気で誰か殺せる気がするとな。

「1、2、3――」
「エクスペリアームズ! 武器よ去れ!!」

その威力がすごかったのか分からない。
だけど、ロックハートはものすごくハデに吹っ飛んだ。

(おおー、すごいすごい、さすが英雄として数々の武勇伝を各地に
 残してきただけあって迫力ありましたよ、ロックハート先生)

よろよろと起き上がった笑顔のロックハートと、少しだけ殺気が消えて
すっきりしたようなスネイプ先生は、組を作るために壇上を降りて
生徒の群れの中に入り込んだ。
ハリーとマルフォイを組ませたのが見えたと思ったら、スネイプ先生が
今度はさっさと真っ直ぐ俺に近づいてくる。

(あれ、何だか、かなり楽しそうですね、スネイプ先生……?)

「そうだな……タカハシはダーヴィウスと組みたまえ」
「よろしくな、タカハシ

体のでかい熱血そうな、どうみても上級生の男子が出てくる。
ちなみにネクタイと紋章が示すのはスリザリン。
背も高いし、格闘技でもやっていそうなほど、ガタイが良すぎる。

(うーん、これだと俺は少し不利そーだな……)

『そう思うか?』

一礼して杖を構えた時。
今まで何も話さなかったサラザールが、少し笑いながら言う。
珍しいと思いながら、俺は何を言わずに続きを訊く。

『私が直々に教えた魔法が、アオイにとって全て無駄だと言うのならば、
 確実にアオイは、こんな決闘ごっこでも大怪我をするだろう』

(――なら、俺のハンデがでかいな……いや、でかすぎる?)

「お前がレーチェを横取りしたのが悪いんだ、覚悟しやがれ!」

(はい? えーっと俺がレーチェを何したって?)

「ステューピファイ!!」

言葉の意味を理解する前に、光が俺の体目掛けて飛んできた。

おいおい、4年で習う魔法を2年に向かって使うなって。
……とか言っちゃえば、この組み分け自体がおかしいんだけど。
心の中でつまんないことをぼやきながら、さっと体を沈ませ、飛んできた
閃光を素早く避ける。
そのまま杖を構え直して、俺は叫んだ。

「ラウディック、転べ!!」

無防備な足元に青い光を当てると、そいつはハデに後ろに転ぶ。
無駄にでかい体のせいで、その衝撃で自滅したらしい。
そいつはうめくばりで中々起き上がってこなかった。
うん、俺の勝ち。

(っと……やばいかも、驚いてるよスネイプ先生が……)

うーん、いくらあの呪文が有効だったとしても、やっぱり先生が
下手に近くにいる時にオリジナル魔法はやりすぎたか。

転んだままの相手に俺は一礼する。
スネイプ先生から送られてくる無言のキツい視線から逃げようと、
その場からそそくさと離れた。
そして無理矢理、皆の前でやらされるはめになって壇上に上がっていく
ハリーとマルフォイが良く見える場所に移動した。

俺の背中に突き刺さってたスネイプ先生の視線がようやく外され、
互いの先生は互いの生徒の後ろに立つ。
ロックハートが号令をかけると、マルフォイが即効で叫んだ。

「サーペンソ~ティア!!」

2人の間に落ちてきた蛇を見て――俺は声が出なくなった。



周りが急に見えなくなって、その蛇だけに視線が集中した。
がんがんと頭に響くサラザールの声も、遠くなる。
体の奥底から、どんどん黒い感情が沸き起こってきた。

ロックハートの間違った魔法で強めに弾かれて、怒った蛇がむくりと
鎌首をもたげる。
生徒の少し後ろに立ってた俺と、ばちりと目が合う。

びくりっとすくみあがった。



「――ちょうちょむすび――見たいよな――?」



忘れもしない。
こいつは俺を馬鹿よばわりしやがった夏休みの蛇だった。
蛇はあの時と同じく情けない声を上げて、口をぱっくり開けて硬直する。

≪うあああああああああああ≫
≪手を出すな、去れ!!≫


……あとで知ったことだが。

この時の状況は、怒った蛇の目の前にいたハッフルパフのジャスティンが
襲われそうになった時、ハリーがパーセルタングを口にした。

それはまるで、蛇をけしかけているように見えたらしい。





NEXT.

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