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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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蒼紅 7

蒼がやるべきこと




「……ん……、今日って何月何日だっけ?」

昨日の校長が教えてくれたことを思い出してた途中。
ふと、俺はサラザールに訊いてみた。
俺がハリポタの世界に来てから2日たった。
だけど、こっちが向こうと同じ日にちだと限らないことにようやく
俺は気づいた。

サラザールはふわふわと空中に浮いて大きな本棚の上段を黙々と
確認していきながら、さらっと答える。

『今日は8月2日だ』

思わず、俺はぎょっと目を見開いた。

「うっわーマジかよ、全然時間率が違ってるじゃん!!」
『……向こうでは違ったのか?』
「8月じゃねぇし……通りで外が暑かったわけだ」

うーん、こっちは夏休み中だったのか。
ヴォルデモートの所で逃げる時、走ったからだとは思ってたけど、
何か暑いなーとは思ってたんだよな。
すぐにホグワーツの中に来ちゃったから忘れてたけど。
サラザールの部屋って、魔法で空調設定されてるみたいだし。

次の新学期は9月1日。
そうか……あと1ヶ月もないのか……。

――よし、決めたぞっ!

「今日からサラザールは、俺専属の家庭教師だっ!!」
『……いきなり何を言い出すんだ? お前は……』

唐突に立ち上がりながら俺が言った言葉に、本棚の確認をやめて
憮然とした顔でサラザールが振り向く。
俺は目を輝かせながら、意気揚揚と拳を握ってみせた。

「校長が俺が希望するなら編入しても良いって言ってくれたし、基本は
 やっとくにこしたことはないってな!!」

ベッドから飛び起きた俺はテーブルについて、サラザールの仕事用の
デスクから勝手に羽ペンとインクと羊皮紙を取り出して、さっきまで
ぱらぱらと読んでた教科書を揃える。

ヴォルデモートやデス・イーターたち、闇の陣営側に俺の存在を
見つけられると厄介だから、俺は堂々と外出ができない。
だけど、さすがにそれでは暇だろうからって学校での授業に必要なモノの
色々を校長が最低限用意してくれたらしく、朝食を終えた時に
たくさんの荷物が部屋に届いた。

(ダイアゴン横丁、行ってみたかったんだけどな……)

『……まったく……。言っておくが、ほんの1ヶ月ほどでお前の
 学年までに覚えるべき授業内容をマスターするとなどということは、
 絶対に無理だぞ』
「でも、勉強はやっておくのに得はあっても損はないだろ?もちろんちゃんと
 教えてくれるよな? なっ? サラザール先生っ♪」

杖を手に持ってにぃーっこりと笑う。
でも、きゃるっとして言ってみたのはやりすぎた……。
正直……自分で気持ち悪くなった。

だけど、勉強すれば俺は独学じゃなくてちゃんと魔法を覚えることが出来て、
使う分だけ杖にも魔力が宿ってくから、サラザールは実体化も断然長く
出来るようになる。
一石二鳥――悪い話じゃない。
それを理解してるんだろうサラザールは、眉を寄せてじっと俺を見た。

『……はあ……アオイは一度言い出したらテコでも引かない
 性格らしいからな。……仕方ない、教えてやろう』
「マジか? よっしゃあ!!」
『――だが。……そう決めてやるからには私はゴドリックたちのように、
 甘い教え方はしないつもりだ。覚悟しておけよ』
「……げ。」



――とは、言ってくれたものの。
サラザールの授業は、確かに半端じゃなくキツかったけど、その分、
教え方はかなり分かりやすかった。

今まで生粋のマグルとして過ごしてきた俺には、マグルとして一般的に普通じゃ
考えられないような理論や感覚。
言葉自体が意味不明なことがたくさんあったけど、俺がまるで分からない所は
とことんみっちりと教えてくれた。
ふっふっふっ……俺ってば、最高の家庭教師を見つけたと思う。

いやマジで、半端じゃなくスパルタだったんだけど。

まあ、そのおかげで俺は自分の紅眼を相手に黒色に見せられる、
あくまで幻術系の初級魔法を覚えた。

かなり上級になってくると、瞳の色そのものを違う色に変化させることも
出来るってサラザールは言ってたけど。
まあ別に、今の所はそこまですることもないだろう。
カラコン割れて余計に困ってたからな……助かった。



勉強も一区切りした所で。
何気なく呪文学の教科書のページをめくった時、突然思い出す。

「わっすれてた! あれ試そうと思ったんだっけ!」
「!?」

俺の隣で実体化して、何か古くて分厚い小難しそうな本を読んでた
サラザールは俺の大声に耳をふさぐ。

「……試す?何を試すというんだ?」
「蛇!」

きっぱりと言った俺に、サラザールは首を傾げる。
まだ俺の言葉の意味が分からないというような顔を横目で見ながら、
テーブルの上に置いといた杖を取った。

「サラザールってパーセルマウスだろ? 俺もそうなのか試す」
「……別に、試さなくても分かることだと思うが――」
「でも俺のこの魔力は元々サラザールのもので、俺自身が持つ本当の
 魔力じゃないだろ? だからだよ。結局、そういうのって資質なんだろうし」
「それはそうかもしれんが……」

分かったような分からないような表情を、サラザールは浮かべる。
手の中でくるくると回していた杖を、しっかりと持つ。
床の方へ構えて俺は呪文を唱えた。

「サーペンソ~ティア! 蛇出でよ!」

すると、しゅるしゅるっと細長いものが滑るような音がして、杖の先から
30cmくらいの蛇が出てきた。
蛇は空中から、ぼとっと床に落ちる。
“よくも乱暴に落としたな”という風に、鎌首をもたげながら
俺のことを睥睨して威嚇してきた。

俺がその蛇をぎろっ!と睨み返すと蛇はびくっ! と、細長い体を一瞬だけ
震わせて、急におとなしくなった。

(あ、まだ紅眼のままにしてたの忘れてたな)

何故だか蛇が怯えた理由は、たぶん素の瞳にあるんだと思った俺は、
もう一度杖を振って黒い瞳にする。
空咳をして、少しだけ険悪にした顔を、にっこりと笑顔にした。

「やあどーもどーも! お前、俺の言葉分かるー?」
≪馬鹿そう奴だな。何か言ってやがる≫



1つだけ分かったことがある。

どうやら俺は、パーセルタングは分かるけど話せないらしい。
便利なのか不便なのか……どっちなのかは分からない。



「――やめろ、やめるんだアオイ!! 何をする気だっ!?」
「ふっふっふっふっ聞いてくれサラザール俺は子供の頃は家族一
 ちょうちょ結びが上手だって言われてなーそれはそれは妹弟が
 雪崩のように習いにきたもんだあいつらが今ちょうちょ結び出来るのは
 まさしく俺のおかげなんだどうだ見たいだろそんな俺の技を!!」
「いいや、私は見たくない!! 絶対に見たくないからその蛇を
 今すぐ逃がせ!!」


はっはっはっ。
遠慮しなくていいんだぞサラザール。

「ここをこう持ってきて下に通すだろそしたらこっちをくるっと丸めて
 それをこう」
≪あああああああああああああああああああああああ≫

悲鳴にも鳴き声にも似た、情けない声が部屋に響く。
しかし俺の気分を氷点下にしてくれたのは、俺の実験台となった君が
生意気な言葉を使ってくれたからですぞ。
出来れば俺の言葉に対する返事が、もう少しその人を見下したような
口調でなければ良かったんですがねぇぇぇぇぇ。

「フィニート・インカンターテム!!」

青ざめた顔をしながら慌てて呪文を唱えたサラザールによって、
俺の手の中で声を上げていた蛇がぱっと消えた。
ちっ、消されたか……。

(蛇め、この場は慈悲深いサラザールに感謝しておくんだな!)





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