―プロローグ―
漂う海。
漆黒の混沌。
『ほう? 望まなければ、決して滅べぬのではなかったか?』
楽しげにくすくすと笑う、威厳ある声。
誰もが逆らえはしない母の声。
膝を突き頭を下げる。
確かに望んでいたというよりも、
この結果は妥協を許した結果でしょう。
厳かな空気。
神々しい雰囲気。
重い威圧感。
首筋を冷や汗が伝う。
言い訳など許されはしない。
『まあ、よい』
よい?
思わず顔を上げそうになって自制する。
何がよいのでしょうか……。
私は役目の途中で混沌へ還ってきてしまいましたのに。
『まだ辿りついてはいない。あと少しの所だったがな』
……どういう事でしょう……。
私は……私はこのまま、混沌に沈むのでは……。
『眠りにつくのだ。次に目醒める時まで』
めざめる――、とき?
『その時まで輪廻で眠れ。次の世は先の世よりも
自由はきくだろうからな』
自由?
私にやりたい事などありはしないのですが……。
『お前にとって千年は長いか? 短いか? 全てが変わりゆく中で
変わらぬものもある』
一体それは
『それを見れば自ずと分かるだろう』
どういう
『分かる時がくる。眠れ、輪廻の中で。次に目醒めた時、
分かるだろう』
一体、それは、どういうことなのでしょうか。
たゆたう混沌。
廻る輪廻。
また眠りにつく我が身。
そして、流れ、目醒め、時を知れば、意味を知る。
我らが全てを生みだせし母のご意志を。
我らが主である王のご意思が。
『ま! どっちにしろあんたもかなり不甲斐なかったから、
輪廻に入る前にお仕置きフルコースだけどねー♪』
NEXT.