冥王(Sound horizon) ×
セフィロス(DISSIDIA FAINAL FANTASY)
話の中にコンサート解釈のネタバレ表現があります。
ネタバレ駄目な方はご注意を。
大丈夫という方は追記からどうぞ。
――私ハ、何故、
深い闇の中、唯唯、浮かんでくるのは其れだけ
冷たい風に吹かれようとも、身も心も冷たくなりはしない
冷たくなるよりもすでに凍ってしまっているのだから
――私ハ、何故、
答えは知っているのだ
例え求める人から与えられずとも
生まれた理由など
手を伸ばして、張り巡らされる糸に手を伸ばす
決して私には触れらざる糸
其は 時を運ぶ縦糸
其は 生命を灯す横糸
決して私には触れる事が叶わぬ糸
其を統べる紡ぎ手
其の理を運命と呼ぶのならば
――私ハ、何故ニ、冥王カ
其れは、冥府の支配者にして亡者たちの王
地上の者たちが 『死神』 と呼び畏れる存在を称す
「私ハ、何故ニ、冥王カ」
そう繰り返しているのは何故か
魂に刻み込むためか、心を戒めるためなのか
本来なら其の必要などない
何故なら、生まれた時から其の使命を受けていたのだから
母なる者は命を運んだ
私は其を奪い続けた
仔等の天秤
傾けるのは背に纏う黒き闇の重みのみ
朝と夜は幾度も繰り返す
邂逅と別離が世界を彩る
地に蔓延りしは生者の群れ
――垂直に堕ちれば、其処は 冥 府
「――ソゥ、私コソガ 死 ダ」
私は平等だ
彼女も、彼氏も、同じように愛しているのだから
王者も奴隷も聖者も娼婦も 等しく私が愛でよう
私こそが平等だ
聖者も、死者と、同じように愛しているのだから
老人も若者も詩人も勇者も 等しく私が散らそう
糸を見つめて思うことは唯一つのみ
「母上……貴柱ガ命ヲ 運ビ続ケルノナラバ」
私は、冥王――
「生キトシ生ケル全テヲ 殺メ続ケルコトデ 奪ィ続ケヨゥ」
私は冥王なのだから
眷属が新しき亡者を連れてくるのが見える
其の扉を開いたら、私は君に告げよう
――冥府へようこそ
大抵の亡者は、自身の置かれている状況が分からないらしい
其れはあまりにも畏れすぎたせいだろう
畏れすぎて簡単に迎え入られたことに戸惑っている
お前は唯、逝ったのだ
お前は逝った 唯、逝ったのだ
何も知らず世界に堕され訳も分からず遣って来る
唯、人間の手では紡げぬ運命に弄ばれ
お前は逝った
唯、逝ったのだ――
糸に伸ばそうとした手をふと止める
見つけた
嗚呼……ようやく私は見つける事が出来た
何も知らず世界に堕とされた双つの生命がたった今
私の声を聞いた
産声をあげる声に私は笑んだ
不運な姫君、嗚呼、血塗れた花嫁よ
泣くことはない
月を手にした夜に私が迎えに往こう
死を抱く瞳、嗚呼、彼は私の器だ
泣くことはない
母を殺める夜に私が迎えに往こう
双つは一つになる
私は黙したままで双りにそう告げよう
私は告げよう
お前達もいずれ知るだろう
この世界に私以外平等などないのだと
この世界を総べるのは無慈悲な女神なのだ
私以外の平等などないのだと
遅かれ早かれ避けられぬのは別離
「ソゥ……私コソガ 死 ダ」
死すべき者――即ち人間――
其に寄り添う影として、母なる者は死を生み出した――
だから私は冥王だ
神々からは虐げられた 常に遠ざけられた
人間からは畏れられた 頑に忌み嫌われた
私が冥王だからだ
光の射さない冥府の闇で私は永い刻を問続けた
死は何故に生まれたのか?
私は何故に殺め続けるのか?
其れは、私が、冥王であり死だからか
母上
貴柱が命を運び続けるのならば
――嗚 呼 私は
「母上」
昏い冥府の其処で幾ら名を呼ぼうとも、貴柱には届かない
応えてはくれないとすでに知っているというのに
嗚呼、呼ばずにはいられないのだ
母上
「……貴柱ガ命ヲ 運ビ続ケ」
それが、私が得た答え
それが、私の得た応え
「怯ェル仔等ニ 痛ミオ 与ェ続ケルノナラバ」
双つは一つ
其の運命が来るまで私は待とう
そう、私は冥王だ
「生キトシ生ケル全テヲ 殺メ続ケルコトデ 救ィ続ケヨゥ」
母上、運命、貴柱から
残酷な世界から別離という救いをもたらそう
待っていろ
生命を憎むといい
お前に救いを与えるのは私なのだから
クラウド、お前に贈ろう
「仔等ヨ、此ノ世界デ、平等ナノハ誰カ――?」
END.